研究概要 |
新しい有機合成手法やその汎用性を高める観点から、「結晶反応は何処まで強制的に制御できるか」は興味ある問題である。我々は、このために、固体光反応の選択性を結晶性超分子の形成により強制的に変換する新しい手法を開発している。本研究では、オレフィン類の結晶光二量化反応を制御するために、ジアミンの他にジカルボン酸およびメタルを非共有結合性リンカーとして用いた研究をした。更に、電荷移動結晶の励起により生成するイオンラジカルの固相反応も研究した。 (1) 非共有結合性リンカーを利用した固相光二量化反応の強制的制御。 (a) ジアミンを用いた研究。ケイ皮酸類を固体状態で光二量化させるときに、ゴーシュ型1,2-ジアミンと複塩結晶を形成させることが反応を強制的かつ選択的に起こすために有効であった。 (b) ジカルボン酸を用いた研究。ケイ皮酸アミド類の固相光二量化反応はフタル酸や蓚酸により強制的に制御できた。フマル酸の場合はヘテロ二量体が生成した。 (c) メタルを用いた研究。ケイ皮酸類の固相光二量化反応は二価メタル(Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)との塩を形成させる方法によっても制御できた。Znの場合は第三成分としてアミンを配位させ、その影響を調べる。 (2) 新しい電荷移動結晶の固相光反応性。 テトラシアノベンゼンをアクセプターとする弱いドナーとの電荷移動結晶の光反応を研究している。強いドナーとの電荷移動結晶は光に対して安定であった。 (3) 炭酸ガスを取り込む超分子結晶。炭酸ガスを含む二成分結晶を作製したが、阻相光反応性は無かった。 (4) 2,4,6-トリイソプロピルベンゾフェノン類の固相光反応。4'-メトキシカルボニル体から生成する安定なラジカル結晶、および、(S)-フェニルアラニンメチルエステル誘導体の固相不斉誘導反応を研究した。
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