研究概要 |
電子線パルスラジオリシス法を用いて、室温、1,2-ジクロロエタン中で1,1-ジアニシルエチレンのラジカルカチオンを生成させ、中性分子との二量化によってスピンと正電荷がそれぞれ1位と4位との分離した1,4一分離型ダイマーラジカルカチオンが生成することを見い出し、過渡吸収スペクトル測定、ラジカル部位と酸素分子との二分子反応速度および求核試薬との二分子反応速度の測定などを行っている。ここでは、1,1-ジフェニルエチレン、1,1-ジトリルエチレン、l,1-アニシルフェニルエチレン、1,1-ジアニシルプロペン、および1,1-ジアニシルビニル基をメチレン鎖で連結した分子内ダイマーモデル化合物について、これらオレフィンのラジカルカチオンの二量化によって生成する1,4-分離型ダイマーラジカルカチオンの生成、反応性がどのように変化するかを検討した。いずれの場合も、s結合型ダイマーラジカルカチオンの生成が観測され、その二量化反応速度定数はオレフィンラジカルカチオンの電子的立体的性質によって若干変化すること、スピンと正電荷が1位と4位とに局在化していることがわかった。分子内ダイマーモデル化合物において、分子内C-C結合型のs結合型ダイマーラジカルカチオンの生成は、n=3のとき最も効率が高かった。1,1-ジアニシルビニル基どうしの接近が重要であることがわかった。次に、1,4一分離型ダイマーラジカルカチオンの励起状態について、発光測定によって検討した。ラジカル部位の光励起によりラジカル部位からの発光が530-600nmに(寿命約200ns)、カチオン部位の光励起によりカチオン部位からの発光が520nm(寿命約4ns)に観測された。したがって、ジアニシルメチルラジカル部位とジアニシルメチルカチオン部位の2つの結合欠損型クロモファの励起状態の間の相互作用は小さいことがわかった。
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