研究概要 |
昨年度,ヒドロゲルマニウム化合物とオレフィンから直接ビニルゲルマニウム化合物を合成する新しい触媒反応を見出し報告した。今年度はその触媒反応の適応限界について検討を行った。スチレンとの反応では良好に反応し,対応するビニルゲルマニウムを選択的に与えたが,アリルベンゼンおよび1-ヘキセンでは生成物を与えなかった。そこで,他の触媒およびオレフィンの組み合わせを検討した結果, ウィルキンソン錯体と1,5-ヘキサジエンおよびコバルトカルボニルとアクリル酸エチルの組み合わせが,共に対応するビニルゲルマニウムを与えることが明らかとなった。この2つの触媒はスチレンとの反応では触媒活性を持たなかったものである。従って,反応が進行するかどうかはオレフィンと触媒の組み合わせが重要であることを示している。なお,この2つの組み合わせはヒドロシランの反応でも良好に反応し,対応するビニルシランを与えていることから ビニルゲルマニウムとビニルシランが反応性において極めて類似していることが明らかとなった。 次に,反応機構を検討するために,置換基の効果について検討を行った。スチレン誘導体である,p-CH_3,p-CF_3,p-F,およびp-Clは良好に反応し,対応するビニルゲルマニウムを与えたので,それぞれの相対反応速度を測定し,その相対反応速度とハメットの置換基定数との関係を調べた。その結果,右肩上がりの直線上に乗ることが明らかとなった。一方,ヒドロシランの同様な反応では相関関係は見られなかった。これはヒドロシランとヒドロゲルマニウムの反応の律速段階が異なっていることを示しており,今後の反応機構の解明に重要な示唆を与えているものと考えられる。
|