研究概要 |
最近、新規な環状シリレン、シラシクロペンタジエニリデン1を生成させ、その反応性が単純シリレンと同様、その電子系は反芳香族4p電子系であることを示した。今回、芳香族性が期待される環内p-電子が2個多いシラシクロヘプタトリエニリデン2を発生させ、その構造等を非経験的分子軌道計算を用いて検討した。 計算結果は1に比較して二重結合と単結合間の結合交替の度合いが小さいく環内炭素上のp-電子は2配位ケイ素電子上の空p軌道を通した相互作用、すなわち非局在化を示唆している。また、7員環の内角の和は899.2°とほぼ平面に近い。このような分子構造は2が芳香族性を有するとして合理的に理解できる。2の母体化合物1,1-ジメチル-1-シラシクロヘプタ-2,4,6-トリエン(シレピン)ではケイ素原子を通したp電子系の相互作用はなく、安定コンホーメションは舟形である。つぎに、2の前駆体を2,3-ジメチルブタジエンおよびヒドロシランを存在下光分解し、2を発生させた。その結果、対応する環化付加物および挿入生成物がそれぞれ良好な収率で得られた。このことは2で2配位ケイ素原子上の電子対がn-軌道を占めるという上記の電子配置と一致する。次いで前駆体を3-メチルペンタン中、77Kでマトリックス中で光照射したところ、2に由来するUVスペクトル(極大:610nm,450nmおよび474nm)が観測された。
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