研究課題/領域番号 |
10134206
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岩森 正男 近畿大学, 理工学部, 教授 (90110022)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1998年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | トリプシン / 疎水性側鎖 / 胆汁酸 / 界面活性剤 / セリンプロテアーゼ / 糖脂質 / 膵臓 / 十二指腸 |
研究概要 |
膵山米の代表的な蛋白質分解酵素は、膵内で酵素活性を持たないチモーゲンとして合成され、十二指腸で活性型に変えられ、強力な蛋白質分解醇素としての役割を示す。膵内での異常な活性化は、膵炎の、また十二指腸や胃内での酵素活性の暴走は、自己組織の消化となり、潰瘍の原因となっている。今間の研究により、上皮組織内に大量に含有されているスルファチドが、膵の消化酵素の強力な不活性化活牲を持ち、上皮組織を保護していることが明らかになった。スルファチドによる酵素不活性化には硫酸基とともに疎水性基を必要とすることから、糖脂質が分子全体として示す新しい生埋活性であり、糖旨質の生理活性としては始めての知見である。消化管におけるスルファチドの分布は組織乾燥重量1g当たり、膵内が0.07nmol,膵管内には全く含有されず、十二指腸が0.2〜0.5nmolであり、また消化液中にも0.4〜54.1μg/mg proteinの濃度で含有されていた。スルファチドによるトリプシンの活性阻害は、50%阻害点での酵素とスルファチドのモル比は1:6〜1:15であった。阻害様式はKmを変えず、Vmaxを低下させ、またゲルろ過によって活性が回復しないことから、不可逆的阻害であると思われる。ムチンやプロテオグリカンにはトリプシンの阻害活性は見られなかった。一方、スルファチドがトリプシンに対して最大の阻害活性を発揮するには、DMSO等の補助剤の作用を必要とした。生体内においては、膵管に胆管が接続し、胆汁酸が膵消化酵素とともに十二指腸に流入することから、胆汁酸が堺面活性剤としてスルファチドの阻害活性を補助する役割を持っていると予想された。実際、胆汁酸成分であるデオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムを用いて、スルファチドの阻害活性を調べると、デオキシコール酸ナトリウムとタウロコール酸ナトリウムがDMSOと同程度の咀害活性を示した。これらの結果は、消化管上皮の成分であるスルファチドが胆汁酸とともに膵消化酵素の不活化を行って生体防御因子としての役割を果たしていることを示している。
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