研究概要 |
スフィンゴ糖脂質の生体膜での集合構造や認識機能を評価するためには、脂質分子の存在状態や糖鎖密度が明確な生体膜モデルが必要であると判断した。そこで、気ー液界面単分子膜を生体膜モデルとして用い、単分子膜界面におけるスフィンゴ糖脂質の認識機能を定量化するシステムを開発した。この様な本測定システムの特徴を利用して、スフィンゴ糖脂質含有膜の構造と糖鎖認識性に関する検討を行った。 1) ラクトシルセラミド(LacCer)は飽和脂肪酸を有するジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)膜中では均一に分布するのに対して、不飽和脂肪酸を有するジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)膜中では相分離構造を示したことを昨年報告した。本年度はLacCer以外のスフィンゴ糖脂質(GMl,GM3,GM4,GD1a)を用いて同様の測定を行ったところDOPC膜中では相分離していることが示された。DOPCとLacCerは結晶性が異なることから相分離構造を形成するものと考えられる。細胞表層でのスフィンゴ糖脂質のバッチ構造の形成機構を知る上で、モデル膜での糖脂質の相分離形成に関する研究は非常に有用であると思われる。 2) インフルエンザウイルスの感染阻害剤として2,7-dideoxy-7-fluoro-2,3-didehydrosialic acidを合成し、シアリダーゼの阻害活性があることを見いだした。さらに、ガングリオシドGM3とインフルエンザウイルスのヘマグルチニンとの相互作用の阻害剤として評価したところ、高い活性が観察された。 3) インフルエンザウイルスに含まれるヘマグルチニン(HA)とGM3ラクトンとの相互作用について観察した。本年度はインフルエンザウイルスとGM3ラクトンとの相互作用についで水面単分子膜を用いて観察した。GlcCer中に再構成したGM3Lactoncに対してもSM中に組み込まれたGM3Lactoneに対しても同等なウイルスの結合が見られた。
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