研究概要 |
本研究ではLPSの構造のどの部分がファージとの相互作用に重要であるかを調べるために、LPS糖鎖の長さの異なる3株の変異株を含む5株の大腸菌を取り上げ、各株からそれぞれLPSを単離した。2株の野生株はD21(Kl2由来)とB株である。ほとんどの遺伝学的研究はK12株を用いて行われているが、ファージの研究では主としてB株が用いられている。LPSは脂質の部分で会合しやすく、単離したLPSは通常大きな会合体を形成している。精密な物理化学的測定を行うためには、均一な分子量のLPSまたは糖鎖部分を得ることが必要なので、1%酢酸による比較的穏和な酸処理によって多糖の部分を切り離して用いた。LPSを1%酢酸で100℃、90分処理して糖鎖部分を切り離した後、凝集したリピドAを遠心で取り除いてから、ゲルろ過(Sephadex G50)によって各オリゴ糖を得た。次に、これらの糖鎖部分の糖組成を、強アルカリ条件でのイオン交換クロマトグラフィーにより分析した。大腸菌BとD21-e7の糖鎖はGlc,Hep,KDO、D21株ではそれに加えてGalとGlcNAcが検出された。他方、D21-flはHep,KDO、YA2l-6株ではKDOのみにより構成されていることが確認された。これらの異なる糖鎖構造のLPSを持つ大腸菌株、またそこから単離したLPSについて、T4ファージの感染効率、失活率、小尾繊維との結合を調べ、相互に比較した。その結果、その結果、感染にはグルコース及びヘプトース残基が重要でおることが確認されたが、gpl2はある程度KDOにも親和性があることが認められた。
|