研究課題/領域番号 |
10134220
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小堤 保則 京都大学, 薬学研究科, 助教授 (70205425)
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研究分担者 |
川嵜 敏祐 京都大学, 薬学研究科, 教授 (50025706)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1998年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | スフィンゴ糖脂質 / アポトーシス / 酵母 / ISP-1 / キナーゼ / 冬虫夏草 / スクリーニング / 免疫抑制剤 |
研究概要 |
冬虫夏草菌の一種でタイワンツクツクホウシに寄生するIsaria sinclairiiの培養濾液より単離された新規免疫抑制剤ISP-1は、構造解析の結果、複合糖質の一つである糖脂質のアグリコンを構成しているスフィンゴシンと類似構造を持つことが明らかにされた。これまでの研究により、ISP-1は細胞障害性T細胞に対してアポトーシスを誘導することにより免疫抑制作用を発揮していることが明らかにされている。さらに、このアポトーシスの誘導は、スフィンゴ脂質及びスフィンゴ糖脂質の生合成経路の最初の反応を触媒する酵素、セリンパルミトイルトランスフェラーゼの活性を抑制することによる細胞内のスフィンゴ脂質あるいはスフィンゴ糖脂質の減少によって引き起こされることが示されている。ISP-1によって引き起こされる細胞死のメカニズムを明らかにするために、より単純な真核細胞である酵母を用いて、ISP-1の影響について検討を加えた。哺乳動物はスフィンゴミエリンとスフィンゴ糖脂質を主要なスフィンゴ脂質として有しているのに対し、酵母はスフィンゴ糖脂質のみを有しているため、ISP-1とスフィンゴ糖脂質との関係を明らかにする上で格好の材料といえる。まず、酵母の増殖に対するISP-1の影響を調べたところ、0.5μg/mlの濃度で酵母に細胞死を誘導した。このISP-1による酵母の細胞死は、酵母のスフィンゴ脂質及びスフィンゴ糖脂質生合成中間産物であるファイトスフィンゴシンの添加で阻害された。さらに、ISP-1によって酵母のセリンパルミトイルトランスフェラーゼ活性は効果的に抑制された。以上の事実より、ISP-1による酵母の細胞死は細胞障害性T細胞の場合と同様の機構が働いていることが推測された。以上のことから、ISP-1による細胞死のシグナルは酵母と細胞障害性T細胞では同一ではないにしても、かなりの共通部分があると考えられる。そこで、酵母を利用してISP-1の作用に拮抗する遺伝子を単離することで、ISP-1による細胞死のシグナルに関与する遺伝子を明らかにすることを試みた。ISP-1存在下で、genomicDNAライブラリーを酵母にトランスフェクションし、ISP-1耐性コロニーを得た。その結果、4種の遺伝子のクローニングに成功した。これらの遺伝子をSLIl-4と呼ぶことにした。このうちSLI-2遺伝子は分子量76kDの可溶性タンパク質をコードしていた。このタンパク質は、分子内にキナーゼドメインを有していた。SLI-2遺伝子の種々の変異体のISP-1耐性作用を検討した結果、キナーゼ活性がISP-1耐性に必須であることが明らかとなった。今後、これらの遺伝子の解析を進めることによって、スフィンゴ糖脂質が関与した、細胞死のシグナルの解明につながることが期待される。
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