研究課題/領域番号 |
10134230
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
橋本 和彦 工学院大学, 工学部, 教授 (20023484)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1998年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | D-グルカル酸 / 糖鎖高分子 / 阻害剤 / 生体異物 / 代謝 / グルクロン酸抱合体 / クラスター効果 / β-グルクロニダーゼ |
研究概要 |
生体異物(毒物)は肝臓でグルクロン酸に抱合され、小腸を経て排出(解毒)されるが、小腸にはこれを分解するβ-グルクロニダーゼがあり、遊離した異物は腸管から再吸収され肝臓に戻る。本研究では、β-グルクロニダーゼの活性を阻害するD-グルカル酸およびその誘導体を経口投与により独占的に腸内に送り込むことができるように、これらを側鎖に導入した高分子を新たに設計・合成し、β-グルクロニダーゼ活性の阻害に及ぼす効果を調べた。まず、D-グルカル酸を置換基にもつ新規スチレン(4)を合成し、アクリルアミドとのラジカル共重合により共重合体(5)を得た。基質としてD-グルクロン酸のp-ニトロフェニルグリコシド(6)を選び、5存在下でβ-グルクロニダーゼの加水分解活性を調べたところ、pH4.7の酢酸溶液中、37℃で阻害率が80-90%に達した。特に低濃度で、グルカル酸部位をもつスチレンモノマー(4)自身よりもはるかに阻害効果を示したのは、同じ高分子鎖中にグルカル酸部位が多数結合していることに由来する、一種のクラスター効果と言える。β-グルクロニダーゼが4つのサブユニットからなる分子量約30万の高分子であることを考慮すれば、共重合体中に高密度に存在するグルカル酸単位が、酵素分子に複数個存在するであろう認識部位と相互作用しているものと推測する。4と類似しているがカルボキシル基をもたないモノマー(7)とアクリルアミドとのラジカル共重合体(8)も合成し同様に調べたが、阻害効果はほとんどなかった。すなわち、共重合体中のカルボキシル基が阻害に重要な役割を果たしていることがわかった。一方7とアクリル酸との共重合体(9)は共重合体5に匹敵する阻害効果を示した。静電的相互作用も関与している可能性がある。共重合体5及び9存在下での阻害に対する基質濃度の影響を速度論的に詳しく検討し、共重合体5は拮抗阻害剤として作用するのに対し、共重合体9の場合は不拮抗的に阻害することを明らかにした。
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