研究概要 |
近年,GD3の生合成がFas受容体を介するシグナル伝達や膜透過性セラミドにより促進され,これが分化・発生に重要な役割を果たすアポトーシス誘導の引金になると報告されて以来,アポトーシスにおけるGD3の重要性が注目されている。GD3はb-系列ガングリオシドの中では最も簡単な構造を有しており,非還元末端のNeu5Ac(α2-8)Neu5Acとセラミ卜部分の二本鎖脂質を構造上の特徴とする。また最近,末端二糖のNeu5Ac(α2-8)Neu5Acはコロミン酸を出発原料とする製法が確立され,大量入手が可能となっている。そこで著者らは,Neu5Ac(α2-8)Neu5Acと脂質二本鎖を有するGD3の類似体を合成し,アポトーシス誘導活性を検討した。 まず,Neu5Ac(α2-8)Neu5Acを2-chloro-Neu5Ac(α2-8)Neu5Ac誘導体へと変換し,これをsilver salicylate存在下allyl alcoholあるいは4-penten-1-olと反応させた。さらに,アルカリ処理した後,末端の二重結合をオゾン分解してアルデヒド体とし, phosphatidylethanolamine(5 eq.)と還元的アミノ化により縮合させて2種のGD3 mimicを収率良く調製した。 次に,GD3はミトコンドリア膜間電位(ΔΨm)を変化させ,これに起因する外膜の膨張・破裂にともなって遊離されるcytochrome cがcaspase 3を活性化してアポトーシスの引金を引くことから,合成したGD3類似体のアポトーシス誘導能をミトコンドリアの膨潤を指標に検討した。その結果,GM1やGD1aでは全くミトコンドリアの膨潤を引き起こさなかったのに対し,GD3類似体はGD3およびGD1bと同程度の活性を示した。
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