研究概要 |
シアロアドヘジンはリンパ球のもつ糖鎖を認識し、その生体内分布を決定して免疫応答を制御しているとの仮説が提唱されている。しかしシアロアドへジンに結合しているリンパ球の種類や性質はいまだ明確になっておらず、その免疫学的意義も明らかでない。我々は、シアロアドヘジンに高親和性を示すリンパ球の種類の同定を試みた。具体的には、シアロアドへジン発現CHO細胞上に脾臓より調製したリンパ球を重層し、非結合細胞を洗い流したのち、結合したリンパ球を特異的結合阻害剤であるスーパー糖鎖分子を加えて溶出した。この特異的に溶出されてきたリンパ球の種類及び機能を解析することによってシアロアドヘジン依存性結合の生理的意義を明らかにしようと考えた。本年度の研究により、脾細胞のうちシアロアドへジンに強く結合するのはBリンパ球及びCD4陽性Tリンパ球のごく一部であることが示された。CD4陽性Tリンパ球はTh1,Th2及びTh naiveの3種類に分類できる。このうちTh naiveに対しては有効なマーカーが知られていなかった。分担研究者である中村はGD1c(NeuGcα2-8NeuGcα2-3Galβ1-3GalNAcβ1-4Galβ1-4Glcβ1-1ceramide)ガングリオシドがTh naiveに豊富に存在し抗GD1cモノクローナル抗体が良いマーカーになることを示した(Nakamura et al.,J.Biol.Chem.,270,3876)。この抗体を使ってTh naiveの接着性を調べたところ、シアロアドヘジン非接着性であることが示された。現在Th1とTh2のいずれがシアロアドへジンに接着性を示すか検討中である。なお、Th1とTh2は細胞内リンフォカインを検出することで区別することが可能である。
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