研究概要 |
光の波長よりも細い領域に挟まれた細線状の有機EL発光素子を作製し,発光特性を観察した結果,その発光波長が異方性を持つことを見いだした. 作製した発光素子において,発光領域はフォトレジストからなる0.2μmのラインアンドスペース構造の壁に挟まれている.レジスト材料は電気絶縁性なので,有機発光層のうち壁と壁の間に挟まれた領域でのみ発光が起こる. 素子の発光スペクトルを観測する際に,偏光フィルターを発光素子と分光器の受光部の間に配し,発光領域を制限する細線パターンに対し垂直または平行な偏光成分を観測したところ,形状に大きな違いが確認された.偏光フィルターを細線パターンの壁に対し垂直に配した場合には,微細構造を持たない素子のものに類似した比較的ブロードな発光スペクトルが観測された.それに対し平行に配した場合には,より短波長側に発光のピークを持つ,波長分布の狭い発光スペクトルが観察された. 現在のところ観測された現象のメカニズムにはまだ不明な点も多いが,発光分子の遷移モーメントと規則的な極微細周期構造場との相互作用による量子光学的効果によって発現しているものと考えている. この結果は有機半導体レーザなどの有機EL発光素子の新たな可能性を示唆するものである.
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