研究概要 |
現在,マイクロマシンの加工技術としては,半導体加工技術を応用したフォトリソグラフィーや,LIGAプロセスなどが主に用いられている。しかし,これらの加工装置は非常に大がかりであり,しかもその分解能は光の波長によって制限される。近接場顕微鏡による加工技術が確立されれば,比較的簡便な装置で,光の波長による制約を超えて100nmよりも小さな加工が可能となり,マイクロマシンの作製に大きな進歩を与えることができる。加工技術を発達させるには,加工したものを観察・評価し,加工技術にフィードバックさせることが必要不可欠である。近接場顕微鏡による加工を評価する場合は,ナノスケールの分解能が必要である。そのような形状観察法としては電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などが挙げられるが,これらは形状観察は可能だがそれ以外の物性の測定はできない。そこで,加工を行った近接場顕微鏡そのもので評価することが非常に有効であると考えられる。この方法では,偏光などの光物性の測定ができ,分解能も加工法に対応しており,しかも観測の際の位置決めが極めて簡単という利点がある。偏光の測定は,ポリマーなどの加工を行う際には非常に重要である。そこで今年度は,加工の評価装置という観点から,近接場顕微鏡を使って偏光測定を中心とする微小物体の分光測定を行った。試料としては,数ナノメートルの細孔を持つハニカム構造を有する直径〜200nmのシリケイト微粒子を用いた。細孔中にCVD法を用いて蛍光色素であるペリレン分子を集積化させ,個々の微粒子の蛍光スペクトルや蛍光強度の偏光依存性を検討した。その結果,微粒子ごとに蛍光スペクトルに違いがあることが明らかになった。これはペリレン分子の集積量の違いを反映している。また,偏光依存性にも微粒子ごとに違いがみられた。これは細孔内での分子の規則的な配列に起因すると思われるが,これが観測できたことから,現有する近接場顕微鏡は加工の評価に使用可能と考えられる。
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