研究概要 |
過飽和固溶体相中の析出反応を利用した従来型の研究手法では困難であった拡散型相変態と界面・粒界移動に関する統一的な組織変化理論の構築に必要な基礎的知見の蓄積を目的として,拡散誘起再結晶(Diffusion Induced Rrcrystallization,略してDIR)をモデル反応として選定し,典型的な全率固溶二元合金系であるNi-Cu系に対しDIRにより生成する合金化微細結晶粒領域(DIR領域)の成長挙動を金属組織学および速度論の立場より実験的に観察した。すなわち,純度99.99%の純Cuおよび純度99.97%以上の純Niを溶解原料とし,O〜38mass%のCuを含むNi-Cu合金および0〜22mass%のNiを含むCu-Ni合金をk雰囲気中の高周波溶解法により溶製し,これらを組合わせてサンドイッチ状のCu/(Ni-Cu)/CuおよびNi/(Cu-Ni)/Ni拡散対等を作製し,723〜1123Kの温度範囲で最長144hの時効加熱処理を施した後,接合界面に垂直な面に沿って時効加熱拡散対を切断し切断面の金属組織を微分干渉型光学顕微鏡を用いて観察し接合界面に垂直な方向に沿った各成分の濃度分布をX線マイクロアナライザーにより定量した。その結果,上記の温度範囲では接合界面からNi相およびCu相に向かって組成の不連続に異なる微細結晶粒領域がDIRにより生成および成長するが,DIR領域は723〜823Kでは主にCu相側に向って成長し,873〜973KではCuおよびNi両相側に成長し,1023〜1173KではNi相側にのみ成長することを見い出した。また,DIR領域の厚さは反応時間のべき乗に比例して増加し,Cu母相のNi濃度およびNi母相のCu濃度が増加するとDIR領域の成長速度が減少することを明らかにした。
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