昨年度の研究で、低温成長GaAsの焼鈍によるAs析出の粗大化段階においてGaAs母相の伝導電子と正孔を減らすように、析出粒子の再分布が起きることを、各種pn接合構造のMBE成長とTEM観察によって見い出した。本年度は、この結果に基づき上記析出粒子の再分布の影響を電気的特性の側から直接観察する実験を行なった。実験として、析出粒子の蓄積が起こった部分と起こっていない通常の低温成長GsAs層のそれぞれの伝導度を測定するために、析出粒子の再分布の起きるものと起きない二つの低温成長GaAs試料を成長し、両方の伝導度の焼鈍による変化を比較した。焼鈍の粗大化段階で二つの試料は伝導度の違いを示し、その違いは析出粒子蓄積層が実質的に伝導電子が欠乏している真性半導体の状態になっていることを意味している。この結果は、析出粒子の再分布が、まさにcarrierの出現を抑えるように起こっていることの最も直接的な証拠といえる。また、本年度は、GaAsの低温成長における過剰Asの導入過程を調べる実験を行ない、その結果はAppl.Phys.Lett.73 1529(1998)に発表した。
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