研究概要 |
1. Al-Li-Cu-Mg-Zr合金の規則化過程 Al-Li系合金の時効初期過程は:過飽和固溶体→δ'(Al_3Li)析出→δ(AlLi)析出と解釈されていたが,最近はcongruentorderingの存在の有無が議論されている。そこで電気抵抗測定,DSC分析,高分解能透過電子顕微鏡により,その過程を検討した。結果は,(1)電気抵抗測定,DSC分析によりA〜Fの6つつの反応が検出された。(2)透過電子顕微鏡観察によると焼入れのままで,ほぼ,均一に規則化しており,その程度はピークAでより顕著になる。APBは{100}および{110}に平行であった。(3)電子顕微鏡観察,電気抵抗および熱分析の結果より各ピークは次のように解釈できる。ピークA:congruent ordering,ピークB:APBとマトリックス間のLi分配あるいはAPBの構造変化,ピークC:δ'粒子の形成とAPBを含む低Li層への分離とδ'粒子ののオストワルド成長,ピークD:δ'粒子の固溶,ピークE:δおよびS'粒子の析出である。 2. 準安定β-Ti合金のβ→αおよびβ→α"変態におよぼすω相析出の影響 準安定β-Ti合金のβ相を300〜400℃に保持すると微細なω相粒子が析出し,これがβ相から斜方晶α"マルテンサイトへの変態挙動に如何なる影響を及ぼすかは明らかでない。そこで,この点について主として透過電子顕微鏡観察によって検討した。結果は(1)溶体化後直ちに焼入れるとβ粒によってα"マルテンサイトは極めて不均一に生成した。(2)しかし400℃で1min程度の短時間保持後に焼入れると明確なω粒子の存在は観察できなかったが散漫散乱は認められ,α"マルテンサイトの生成は逆に加速され,β相中に極めて均一に生成した。(3)400℃での保持時間の増加に伴ってα"マルテンサイトの生成は抑制され,微細α相の核生成が促進される。300℃では,1minでも微細ω相粒子が多量に析出しα"マルテンサイトの生成はほぼ完全に抑制される。
|