研究概要 |
層状無機格子の有機誘導体の層間にある有機残基を層間で炭化させ,新規な無機酸化物ー炭素の複合材料を合成することを目的として研究を行った。本年度は,昨年度の研究で新規に合成したベーマイトのアルキル誘導体,および層状α-リン酸チタンのグリコール誘導体を出発原料として,それらの層間にある有機残基の炭化挙動を詳細に検討した。ベーマイトのアルキル誘導体では,420℃付近でアルキル基が熱分解してオレフィンを生成し,次にベーマイト構造が崩壊して遷移アルミナに変化し,さらに,530℃付近で芳香族化合物の放出などを伴って炭化が進行し最終的にアルミナー炭素複合体が得られた,生成物は原料の持つハニカム状の構造を維持し,また,炭素によるアルミナ構造発達の阻害が認められた。一方,α-リン酸チタンのグリコール誘導体の炭化挙動では,300〜350℃にかけてグリコールのC-O結合の解裂が起こり,アセトアルデヒド,アリルアルコール,環状エーテルがそれぞれ1,2-,1.3-,1,4〜1,6-のグリコール誘導体から生成し,次にα-リン酸チタン層が崩壊して無定形となった。さらに,低温でも,オレフィンやアルコールなど還元生成物が認められ,層間のリン酸基の影響により炭化が進行し,最終的に2リン酸チタンー炭素複合体となった。1,4〜1,6-のグリコールの誘導体から得られた複合体中の炭素含有率は低く,また,2リン酸構造も良く発達し,有機残基が環状エーテルとして飛散することがこれらの原因と考えられた。これに対し,エチレングリコール誘導体から得られたものは,無定形であり,層間に存在する炭素のため2リン酸構造の形成が困難となったものと考えられ,さらに,原料の炭素分析値から考えれば高い炭素含有率を持ち,しかも他のグリコール誘導体から生成した炭素に比べこの誘導体中の炭素が均質であることが云唆された。
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