研究概要 |
本研究の目的のため、1996年から1997年にかけて米国フェルミ研究所において行ったKTeV実験の解析を行った。 まず、崩壊の過程においてC.P(粒子・反粒子変換と、空間反転)の対称性が破れている(直接的なCPの破れ)ことを発見した。実験は、中性K中間子のK_L,K_Sがπ0π0、π+π-に壊れる4種類の崩壊の分岐牝の比を精密に測定した。20%のデータをを解析した結果、直接的なCPの破れの寄与を間接的なCPの破れの寄与で割った値はRe(ε'/ε)=(28.0±3.O(stat)±2.6(syst)±1.0(MCstat))x10^<-4>(preliminary)と、6σ以上で有意に0から離れていた。これにより、CPの破れの説明をしていた超弱理論を否定した。 また、時間対称性の破れを発見した。これは、K_L→π+π-e+e-の崩壊において、Kの重心系でπ+π-のなす面とe+e-の面の間の角度分布に非対称性があることからわかった。この現象は、CPの破れから予言されてはいたが、CPTの対称性を仮定せずに初めて観測された、時間対称の破れである。 更に、CPの破れを決める標準理論のパラメータを正確に求められることで有望な、K_L→π^0vv^^-崩壊を探索した。これは、π^0→-e+e-γの崩壊を用いることによリバックグラウンドを押さえ、分岐比に対し<5.9x10^<-7>(90%CL,preliminary)の、世界で最小の上限値を得た。 また、CPの非保存を見ることのできる、K_L→π^0μμを探索し、その分岐比の上限値をこれまでのl/12まで下げた。 その他、将来のK_L→π^0vv^^-の実験のために必要なガンマ線検出器の検出効率を測定する実験をKEK,京大、佐賀大などと共同で行った。これにより、CsIの結晶や、鉛とシンチレータのサンドインチのガンマ線検出器の、光核反応による不感率を50MeVからlGeVの範囲のガンマ線に対して測定した。
|