超重力による超対称性の破れを仮定したSU(5)超対称大統一模型ではレプトンフレーバーの破れが起る。しかし、SU(5)模型では右巻きのスカラーレプトンにのみフレーバー混合が起るため典型的なレプトンフレーバーを破る過程であるμ→eγ崩壊の分岐比は現在の上限値よりかなり小さくなる。これはSO(10)模型などと異なるSU(5)模型の特徴と考えられてきた。これに対し、我々は一般に存在すると考えられる高次元演算子の効果を考慮すると左巻きのスカラーレプトンにもフレーバー混合が起ることを指摘し、この効果を取りいれてμ→eγ分岐比を計算した。その結果、この分岐比は高次元演算子の効果を考えない場合に比べて数桁増大することがあり、現在の上限値に近づくことが分った。最近のスーパーカミオカンデの大気ニュートリノに関する実験結果はレプトンフレーバーの破れを示唆している。この実験結果を右巻きのニュートリノを超対称標準模型に導入することにより説明することができる。この場合、超重力による超対称性の破れを仮定すれば、第2第3世代の左巻きのスカラーレプトンの間に大きなフレーバー混合が期待される。この枠組で、ミューオンコライダーおよび電子陽電子衝突型線型加速器における左巻きスカラーレプトンの生成崩壊過程でどの程度の大きさのレプトンフレーバーの破れを検出し得るかを明かにした。SO(10)超対称大統一模型におけるクオーク・レプトンの質量および混合についても調べた。 クオーク・レプトンが少なくとも2つの10次元表現と1つの反126次元表現のHiggs場と結合しているような模型ではニュートリノの質量行列はクオークおよび荷電レプトンの質量行列の線型結合で表される。このような模型で、既知のクオークおよび荷電レプトンの質量や混合を説明しつつ、太陽および大気ニュートリメ、実験から期待されるニュートリノの質量および混合を説明できることを示した。
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