研究概要 |
エネルギー多消費産業である電力,鉄鋼,セメントなどの基盤産業は,それぞれ国内の主要CO_2排出源であるが,極限近くまで合理化された各産業におけるCO_2排出量の削減は極めて困難である。そのため、これらのCO_2エミッションを削減するためには,業種を越えた産業間で資源,廃棄物や廃棄エネルギー利用のネットワークの形成が有効な手法のひとつである。廃プラスチックのリサイクルにおいては,現在,油化や燃料化によるエネルギー回収が検討され,2010年には廃プラスチックの90%をリサイクルすることを目標としている。本研究では,廃プラスチックリサイクル有効利用のモデルを作るため、そのフローを解析し,業際間のネットワーク形成により新しい業際間リサイクルシステムを構築した場合の、CO_2排出削減効果の検討を目的とする。 今回は特に、代替石炭として脱塩化水素廃プラスチックを業際的リサイクルによりエネルギー・素材産業において利用し、ゼロエミッション化を図るため、各産業における石炭利用の物質フローを解析し,新しい廃プラスチックリサイクルシステム構築によるゼロエミッションの効果を検討した。 ゼロエミッションの要求を満たしつつ廃プラスチックのリサイクル率を高めるための対象は,製鉄業、石炭火力、セメント工業の3つのプロセスである.上記3つの基盤産業で石炭消費量とCO_2排出量の現状を把握し、脱塩化水素した廃プラスチックの利用可能量を概算した。代替石炭として混合廃プラスチックを炭素源に利用した場合の単位重量あたりの発熱量を概算したところ混合廃プラスチックと脱塩素混合廃プラスチックの単位重量発熱量はそれぞれ9148,9774kcal/kgとなる。脱塩素混合廃プラスチックの発熱量を脱塩素操作前の重量あたりに換算するとその発熱量は9195kcal/kgとなった。 1996年現在、廃プラスチックの総排出量は884万トンであり、そのうち37%が単純焼却、38%が埋立されており、あわせて663万トンが未利用のままとなっている。このうち未利用分を代替石炭として、電力、鉄鋼、セメントの3産業で利用した場合、二酸化炭素削減率は電力、鉄鋼、セメントの各産業においてそれぞれ、9,4,および29%程度であると推定される。
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