研究概要 |
本研究では,紙パルプ工場における水利用サイクルのクローズト化のための基礎的な知見を得ることを目的に代表的なパルプ製造法であるクラフトパルプ(KP)及び古紙パルプの製造プロセス排水特性を明らかにし,その問題点の整理を行い,製造プロセスにおける水利用サイクルのクローズト化の推進に必要な要素技術の検討を行った. 1. エミッションの特色 クラフトパルプ;KP製造は木材チップからパルプの原料となる繊維分を薬剤により取り出し(蒸解),洗浄,精練を終えた着色パルプを薬剤で漂白するプロセスからなる.個々の製造プロセス排水のCDO,BOD濃度は洗浄-精錬排水でそれぞれ260.0,199.0mg/l,漂白排水でそれぞれ680,295.0mg/lであり,漂白排水がCOD,BOD濃度ともに高い値を示した.漂白プロセスの用水使用量は全用水使用量の約40%を占める.従って,工場内の水利用サイクルのクローズト化には漂白プロセスの排水対策を行うことにより用水使用量の削減が推進されると考えられた. 古紙パルプ;古紙パルプの製造は古紙からパルプをパルパーで溶解し,除塵を終えた印刷インクの付着したパルプを薬剤(過酸化水素,界面活性剤)で漂白・脱墨し,洗浄を行うプロセスからなる.個々の製造プロセス排水のCOD,BOD濃度は漂白・脱墨でそれぞれ1340.0,614.0mg/l,洗浄でそれぞれ700.0,571.0mg/lであった. 2. 水利用サイクルのクローズト化の推進に必要な要素技術の検討 新しい漂白技術であるECF(無塩素漂白:キシラーゼとキレート,二酸化塩素)は現行の塩素漂白と比較して,用水使用量が約25%節減し,CODが約50%削減が可能となることがわかった.
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