研究概要 |
使用あるいは廃棄に伴って環境中に漏出した化学物質のうちで、生分解あるいは光分解等が困難で、環境中に蓄積し、人体あるいは生態系に悪影響を及ぼす物質は数多くある。しかしながら、それらの化学物質の環境中での分散過程、分解過程、蓄積過程などについては十分に把握できていないのが実情である。化学物質の大気から地表への降下を詳細に調べるために、大気中の化学物質を粒径別に測定した。使用した装置はエアロゾル粒度分布測定用エアーサンプラー(柴田科学、Andersen type,AN-200)で、3-4日間大気を採取した。GC-MSを用いて50種類の化学物質〈有機リン酸トリエステル類13種、農薬25種、フェノール類3種、フタール酸エステル類9種類〉の濃度を測定した。 2.1-4.7μm及び0.43-0.65μmの粒子の質量が大きくなっていた。予備的なPIXE(particle Induced X ray emission)分析を行った結果、前者はCa,Feを含み土壌の舞い上がりなど自然由来の、後者はMn,Pb,Zn等を含み人為的な汚染によることが示唆された。また、粒径別に測定した粒子中の農薬については農薬(BPMC,IBP,Benthiocarb,Fthalide,Isoxathion,Chlorbenzilate等)の特徴がよく現れていた。4-Octyl phenol,Bis-phenol及び2-ethyhexyl adipateの粒径別変動について、前2者は2.1-4.7μmの粒径で濃度が増大しており、土壌などの舞い上がり等による人為的な汚染が示唆された。他方、後者は濃度が高いが、明確な傾向は認められなかった。土壌、埋め立て排水、河川水、貯水池水中のこれらの濃度を測定したところ、特徴的な傾向が認められ、モデル作成に必要なコンパートメントに関する知見が得られた。次に、特性の異なる化学物質ごとに分け、負荷量を評価するとともに、メディア間での輸送量についての測定を行う必要がある。
|