研究概要 |
河川水等への多数の微量化学物質の混入が報告されており、水処理過程ではこれらの無毒化、あるいは毒化が生じることが考えられる。本研究では、水処理過程での有害物質生成、放出抑制の評価手法確立を目的とした。オゾン処理でフェノール化合物からラジカル中間体が生じることから、有害性の指標として酸化ストレス惹起性に着目し培養細胞を用いた遺伝毒性試験により解析した。ヒト子宮頚部癌由来株HeLa細胞と薬物耐性遺伝子、カタラーゼ遺伝子、カタラーゼ及びSOD遺伝子導入株を用いて検討した。2,4,6-Trichlorophenolによる小核形成はいずれの細胞でもS9mix添加により増大した。そして、S9mixの有無に関わらずカタラーゼ遺伝子導入株では有意に小核形成が抑制され、カタラーゼの阻害剤である3-aminotriazoleを添加するとカタラーゼ遺伝子導入による小核形成抑制効果がなくなった。また、カタラーゼ・SOD両遺伝子導入株においては昇格形成は抑制される傾向を示した。以上の結果からこれら遺伝毒性発現には代謝過程で生成される過酸化水素が関与していることが示唆された。次に、肝薬物代謝酵素を含むS9mix添加によって毒性が増加することから、新たに抗酸化酵素を過剰発現させたヒト肝由来細胞を作出し、酸化ストレスを介した肝傷害性の評価系の確立を目指した。米国国立保健研究所のデータベースより入手したCu,Zn-SOD,Mn-SOD, Catalaseの塩基配列を元にプライマーを作成し、RT-PCR法により増幅単離し、ヒト肝癌由来HepG2細胞に導入した。これについては、安定な遺伝子導入細胞株の単離を行っている段階であり今後の課題として残された。
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