研究概要 |
1)非線形ジョセフソンプラズマ共鳴を利用して,Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(BSCCO)単結晶において,磁束融解転移をまたぐときに共鳴ピークに対してどのような変化がおこるかを調べようとしたが,マイクロ波電磁場の振幅の増大による共鳴周波数のシフトよりも磁場をかけたことによる融解転移温度のシフトの方が遅い試料が得られず,十分なサンプルを採ることが出来なかった.測定した範囲では,最初の測定で得られた融解転移をまたぐことによる共鳴ピークのブロードニングには,必ずしも,再現性を得られなかった. 2)BSCCO単結晶において,混合状態のミリ波(40-100GHz)の複素抵抗率を測定した.特に,磁束格子融解転移やいわゆるピーク効果磁場(次元クロスオーバーに対応すると考えられている)をまたぐように測定を行った.その結果,磁束格子融解転移をきっかけに,それより高磁場側,すなわち,磁束液体相において実効侵入長が著しく増大することがわかった.一般に実効侵入長が増大する原因としては,磁束量子の運動(ピン止めの性質)の変化に起因するものと,ロンドン侵入長の増大,すなわち,超流体密度の減少に起因するものの二通りが考えられるが,簡単な考察から,実効侵入長の増大の原因は,ロンドン侵入長の増大,すなわち,超流体密度の減少によるものであると結論づけられた. この発見により,少なくとも,高温超伝導体BSCCOにおいては,磁束格子の構造の変化が,電子状態に少なからぬ変化を引き起こすことが明らかになった.簡単に思いつくのは,高温超伝導体のようにd波のvortexでは,コア領域のはるか外側まで,準粒子が存在するため,磁束格子の構造変化が電子状態に大きな影響を及ぼすというメカニズムだが,現時点で,定量的に満足の行く解釈に成功はしていない.現在,詳細な周波数依存性,組成依存性,物質依存性などのデータを取得中あるいは取得計画中である.
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