本研究では、下層雲の微物理特性(雲水量、雲粒有効半径、雲粒数密度)と下層大気中のエアロゾル特性(粒径分布、数密度)の関係を明らかにすることを目的とする。本年度は、NOAA/AHRR衛星観測データを用いて日本周辺の雲の光学的厚さと雲粒有効半径を調べるとともに、これらの結果について従来の研究から得られている日本付近のエアロゾルの特性を考慮して考察を加えた。また、地上からの放射観測によって低層雲の雲水量と雲粒有効半径を推定する方法の開発と、雲の下の層(sub-cloud layer)におけるエアロゾルのパーティクルカウンターによる観測を開始した。さらに、エアロゾルの種類や数濃度が雲の短波放射特性に及ぼす影響について、簡単なシミュレーションを行い、考察を行った。 その結果、雲を形成している空気塊の起源の違いによって、形成される雲の雲粒有効半径が異なることが示唆された。しかしながら、太陽放射の反射光を用いて雲の微物理特性を推定する手法は、雲頂の凹凸や雲の不均質性によって影響を受ける可能性があり、細かい議論を行うためには、これらの点について研究を行う必要がある。また、エアロゾルが凝結核として雲に影響を及ぼし、雲の短波放射特性をどのように変化させるのかということについて、簡単な数値シミュレーションを行った。その結果、雲の短波放射に対する反射率と透過率は凝結核となるエアロゾルの構成物質よりも数密度に大きく依存することが分かった。一方、吸収率についてはあまり大きな変化は見られなかった。
|