研究概要 |
大気環境変動のメカニズムの解明において,エーロゾルの果たす役割は重要である.非汚染地域である乗鞍岳と富士山麓でエーロソル,降水,霧の観測を行った.pHの範囲はpH4.2から5.9の範囲にある.霧水と降水を比べてみるとpHは霧水で低い値である.霧水では、硫酸イオン、硝酸イオン濃度は降水に比べて非常に高い.容存有機炭素濃度は霧氷では降水中の10倍から100倍程度高い.乗鞍岳の降水中の主要成分のイオンバランスとpHの関係を調べてみると、いくつかの試料については、陽イオンが多く存在し、pHとの間のバランスが説明できない.この原因は降水中に溶けている有機物がpHのバランスに影響を与えている。乗鞍岳での降水および霧水の化学成分では有機物濃度の変動が極めて重要であることが示唆された. 降水中にバクテリアが検出された,しかもその多くは土壌あるいは海水の飛沫(海塩)と共存している.これらの数を計測したところ1cm3の降水中におよそ1×104個存在していた.蛍光粒子が観察され,これらの粒子の赤外スペクトルから,タンパク質および脂質態物質で構成されている生物起源有機物粒子であることが示唆された. 粒子状炭素の粒径は1μmより小さな粒径に大部分存在している.これらの粒子の濃度0.2から1.0μg/m3の間にある.粒子状の炭素の主なものはすすで,表面が疎水性で水に対して親和性が非常に小さいと考えられるが,すす等の粒子状炭素の表面は効率良く,水を吸着する可能性が高いことが示唆された. これらの研究成果から山岳地での系統的な研究がさらに必要であると考えた。有機物粒子の霧水形成への影響は、これらの粒子の雲物理学的役割を評価するうえで極めて重要な課題である。
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