研究概要 |
真核生物標的膜蛋白質の表面提示と活性発現系として大腸菌を利用することは、他の真核培養細胞で発現させる場合と比較して、操作性、経済性の点で有効であり、実験労力の低減を可能にする。現在まで難しいと考えられてきた単細胞生物の細菌に真核生物の膜蛋白質を容易に活性発現することが可能となれば、新規の発現系の開発として認知され真核膜蛋白質の分子デザインの研究に大きく寄与する。本研究から以下の成果を得ることができた。 1、 高等植物のイオン輸送体(KAT1,AKT2,AtKUP1)をK^+取り込み系が変異している大腸菌において活性発現を試みたところ、KAT1,AKT2,AtKUP1はK^+取り込み能を欠損した大腸菌を相補することを見いだした。K^+の初期濃度7.6-10.4mMの範囲では、対照のプラスミドを導入した大腸菌は増殖しなかった。また、イオン孔のアミノ酸が変異しているKAT1は機能しないことが分かっていたが、予想通り大腸菌においてもK^+輸送の欠損変異を相補しなかった。 2、 Shaker型K^+チャネルKAT1のトポロジーの決定を行った。疎水性プロットからKAT1には8箇所の疎水性領域(S1,S2、S3,S4、S5,H5,S6,S7)が存在する。推定膜貫通領域の前後に細胞外で活性を示すPhoAを連結した8種類のプラスミドを作成した。解析したところ従来から推定されていS1,S2,S3,S4,S5,S6は膜貫通領域であること、孔を形成するH5と疎水性の度合いが強いS7は膜を貫通していないことが明らかとなった。 真核生物由来の膜蛋白質が大腸菌で機能を持って発現することを証明した。さらに、構造と機能の解析が可能であることを示した。
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