研究概要 |
標的細胞の選択的増殖阻害分子の構築を目的としてヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)といくつかの消化酵素(ヒト膵臓RNase1,ウシRNaseA,ブタペプシノーゲン)を遺伝子上で融合,あるいは化学的に架橋したハイブリッド蛋白質を調製した。調製したRNase1-bFGF融合蛋白質及びRNaseA-bFGF架橋蛋白質は,約3μM及び約0.4μMの濃度でFGF受容体高発現マウス黒色腫B16/BL6細胞株の増殖を50%阻害(GI_<50>)したが,ペプシノーゲン-bFGF架橋蛋白質は顕著な増殖阻害効果を示さなかった。また,RNase1-bFGFはいくつかのヒト由来の培養ガン細胞に対してもμMのオーダーで増殖を阻害し,そのうち3種類の細胞ではFGF受容体の発現が報告されていた。FGF受容体を発現しない細胞に対しては増殖阻害効果は認められないことから,RNase1-bFGFあるいはRNaseA-bFGFの細胞成長阻害活性はFGF受容体を過剰発現する細胞に対して特異的であると結論した。 RNaseA-bFGFとRNase1-bFGFを比較し,RNase1-FGFの機能を蛋白質工学的に強化するための方策を検討した。その結果,毒素ドメインであるRNase1を,プロテアーゼによって消化されにくくすること,細胞内のRNaseインヒビターによって阻害されにくくするこ,さらには粗面小胞体に効率的に集積するためのシグナル配列を導入し,蛋白合成の現場で効率的に働かせることが重要であることがわかった。
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