研究概要 |
受容体-リガンド分子間の結合面の相補的な構造を模倣する機能性小分子は、標的分子(受容体/リガンド)に対する特異的なターゲッティング素子として機能する。このような機能性小分子として、我々は、ファージライブラリシステムを用いて、免疫細胞の表面蛋白質であるCD80と特異的に結合するペプチドモチーフF2を決定した。本研究では,F2ペプチドモチーフをナノスフェアに結合させたバイオコンジュゲートによる免疫細胞表面分子への標的化とそのシグナル遮断による免疫反応の制御を行うことを目的とした。 15残基よりなるF2モチーフの配列を持つペプチドを合成し,それをポリスチレン・メタクリル酸共重合ナノスフェアにコートしたバイオコンジュゲートを作製した。しかしながら,このバイオコンジュゲートは,CD80に対ずる結合能が低下していたため,F2モチーフに変異を加えることで高い結合力をもつモチーフの創製を検討した。即ち,F2モチーフの各アミノ酸サイトに約50%の率で変異が導入された変異ライブラリをfUSE5ベクターによるファージディスプレイシステム上で作製し,このライブラリの中から,抗CTLA4抗体とCD80に高い結合能をもつモチーフを有するファージをパニングによって選別した。得られたファージについて,そのCD80に対する結合能を解析したところ,元のF2モチーフの数倍の結合活性を持つものが得られた。さらにこれらのモチーフの配列解析を行ったところ,結合に重要なアミノ酸残基が同定された。これらの配列をもとにした合成ペプチドのバイオコンジュゲートを用いた免疫細胞の標的化と免疫反応の制御が今後の課題である。
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