研究課題/領域番号 |
10146202
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
稲辺 保 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20168412)
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研究分担者 |
内藤 俊雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 講師 (20227713)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1998年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 水素結合 / 電荷移動錯体 / ジアミノピレン / 高伝導性分子結晶 |
研究概要 |
プロトン-電子相互作用に基づく分子結晶の新しい電子機能開発に向けて、電子供与体と電子受容体との間に水素結合をもつ電荷移動錯体を中心に構造・物性研究を行なった。電子供与体として1,6-diaminopyrene(DAP)を用いた錯体には特異な電気物性を示すものが知られており、本研究ではDAPと種々のアクセプタとを組み合わせた水素結合系電荷移動錯体に焦点を合わせた。 tetrahalo-p-benzoquinone系アクセプタとの錯体は交互積層型構造で結晶イヒするが、成分間に実質的な電子移動が起こっていない中性の基底状態を取るという共通の特徴を示す。この構造・電子状態は導電性に全く不利であるにも拘らず、中には10^0〜10^1Ωcmという高伝導性を示すものもある。これらの結晶のX線構造解析やIR測定では成分分子のイオン化は認められなかったが、ESR測定によってわずかなイオン性成分の存在が検知され、その常磁性磁化率の挙動が導電性の挙動の違いによって変化することが見い出された。 一方、TCNQ系のアクセプタとの組み合わせでは、完全にイオン化した成分分子が分離積層構造で結晶化する。TCNQ錯体では等しい面間距離で積層しており、大きな伝導の活性化エネルギーを持つことからMott型絶縁体の特徴を持っていると考えられるが、室温比抵抗値が10^<-1>Ωcmと異常に低い。アクセプタ性の強いF4TCNQとの錯体は2枚周期で積層し、Peierls型の格子歪みを伴って絶縁化していることが分かった。TCNQ錯体で顕著に現れたon-siteクーロン反発エネルギーの効果が、F4TCNQ錯体では電子のtransferエネルギーによって隠され、この系が電子相関とtransferエネルギーの競合の境界領域にあることが新たに見い出された。
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