研究概要 |
本年度は主に、クロモフォア間の電子的相互作用によるスピン非局在化により、可視および近赤外域で超高速応答する材料が開発された。 二つのニトロスチリルピリジニウム基を異なる数(n=3,4,6)のメチレン鎖で連結した化合物を新しく合成し、対イオンをテトラフェニルホウ酸に交換した。これらを脱気下、アセトニトリル中で定常光照射した。イオン対間光誘起電子移動に基づくスチリルピリジニルラジカル生成による可視域の吸収変化がいずれの場合も観測された。n=3の場合には極めて特異的で、948nmの吸収が非常に大きく、また1742nmにピークをもつブロードな吸収が2600nm付近まで観測された[1]。n=4の場合には、1400nm以下にのみ吸収が則され、ピークは995と1145nmであり、非連結化合物とほとんど同じで、重なりの異なる2種の分子間ダイマーラジカルカチオンに帰属された。その安定化エネルギーはそれぞれ61及び51kJ/moleであった。n=3の連結化合物でのみ観測されたこのようなスペクトルは、スチリルピリジニルラジカルとスチリルピリジニウムとの分子内ダイマーラジカルカチオンの電荷共鳴相互作用によると結論された。948nmの吸収がサンドイッチ型に、1742nmの吸収が部分重なり型に対応すると考えられる。ダイマーラジカルカチオンの安定化エネルギーは、サンドインチ型が64kJ/mole,部分重なり型が34kJ/moleと求められた。これは分子内電荷共鳴吸収を示す初めての安定ダイマーラジカルカチオンである。
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