研究概要 |
1. [3]スーパーファン1の合成は、[3_3](1,3,5)シクロファンから出発する従来のルートではグラム単位の合成は困難であった。我々は、まず、[3_4](1,2,4,5)シクロファンの高収率・大量合成法を開発し、この四架橋体のアルドール環化により[3_5](1,2,3,4,5)シクロファンが高収率で得られることを見出した。また、[3]スーパーフェロセノファンの合成も行っており、現在、三架橋体のアルドール環化反応により四架橋体の合成を進めている。 2. 多架橋[3_n]シクロファン類(n=3-6)とTCNQとの電荷移動錯体のX線結晶構造解析を行い、これらの錯体の組成比と構造を明らかにした。[3_3](1,3,5)シクロファン-TCNQ(4:1)錯体および1-TCNQ(1:1)錯体の単結晶の伝導度は半導体と絶縁体の境界値を示し、これは、錯体が交互積層構造をとるためであると結論されたので、現在、ドナーであるシクロファンの分子設計と結晶構造制御法について検討している。 3. [3_3](1,3,5)シクロファンを含水ジクロロメタン中、低圧水銀灯で照射すると、ビスホモペンタプリズマン骨格を持つアルコール(5.4%)が単離される。一方、[3_4](1,2,4,5)シクロファンは、同条件下で6個の六員環と4個の五員環で構成され、二個の水酸基を持つ複雑で新奇なかご型化合物に変換する(X線結晶構造解析)。生成の機構としては、ヘキサプリズマン誘導体が生成した後でプロトン化が起こり、生成したカルボカチオンが次第に安定なカチオン種に変化して最終的に水酸基で補足されたものと考えている。現在、ヘキサプリズマン誘導体を単離するための光反応条件を検討している。
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