研究概要 |
非局在型新規安定開殻分子であるチオアミニルラジカルは、酸素と反応しない単離可能なラジカルとして興味深い。本研究ではpyridyl基をもつ種々のチオアミニルを生成させ、それらの安定性、単離および磁化挙動を検討している。pyridyl置換チオアミニルラジカルとして、N-(arylthio)-4-(2-pyridyl)-2,6-diphenylphenylaminyls(1),N-(arylthio)-2,4-di(2-pyridyl)-4-phenylphenylaminyls(2),N-(arlthio)-2,6-diphenyl(4-pyridyl)aminyls(3)およびN-(2-pyridylthio)-4-substituted-2,6-diarylphenylaminyls(4)が検討され、3は不安定で単離されなかったが、1,2および4は非常に安定でラジカル結晶として単離された。また、1および2のラジカルについて3例X線結晶構造解析に成功しており、詳細な構造解析が行われた。その結果、N側ベンゼン環、N、SおよびS側ベンゼン環はほぼ平面にあるが、2および6位の芳香環は著しくねじれていることが示された。1、2および4の磁化挙動を超伝導量子干渉計を用いて測定した結果、2例のラジカルで強磁性的な相互作用が見出され、そのうちの1例は1次元Heisenbergモデルを用いて解析され、2J/k_B=+22.4Kと決定された。また、もう一つのラジカルについては1次元Heisenbergモデルでは解析できず、X線結晶構造解析結果にもとに磁化挙動を解析している。なお、それ以外のラジカルについては、反強磁性的な相互作用が見られ、反強磁性的1次元Heisenbergモデルや1次元交互鎖モデルを用いて解析されてた。
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