研究概要 |
天然産のクロロフィル類を原料として、この比較的安定なクロリン骨格を保持しつつ周辺部位を有機化学的に修飾(官能基変換)することで、発展性のある多彩な構造を持つ拡張共役電子系の開発を行うことを研究の目的とし、この目的を達成するために、本年度は(1)クロロフィル類縁体の新規合成に重点を置き、あわせて(2)合成クロロフィル類の自己集積も検討を行った。具体的な研究成果は以下の通りである。 ラン藻の一種であるスピルリナからクロロフィル-aを、ホウレンソウからクロロフィル-bを単離抽出し、これらを出発原料として、クロロフィル類縁体の合成を行った。これらの原料のクロリン骨格に、反応性に富んでおり官能基変換に適しているホルミル基を直接導入した(3、7、8位)。この合成したホルミル基を有するクロリン化合物は、分子内にエステル及びケト型のカルボニル基が存在しているが、選択的にGrignard反応を行うことが可能であり、新規な化合物の合成が効率的に行えた。また、自己集積能に必要な1)水酸基:2)ケトカルボニル基:3)中心亜鉛(あるいはカドミニウム)金属を有する化合物を合成し、その自己会合体の調製を均一系(低極性有機溶媒中やミセル系)や不均一系(薄膜や結晶状態)で行った。その超分子構造は、NMR,UV-Vis,CD,FT-IR,共鳴ラマン,蛍光分光法などの分光学的手法を用いて推定した。いずれの自己会合体においても、クロリン環同志のπ-πスタッキングが、C=O・・・H-O・・・M型の結合によって規制されつつ強固になっていることが判明した。
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