研究概要 |
本研究の目的は,原子スケールの表面構造観察,表面物性研究の手段と経験を活かして,プロチウムによる金属表面の微視的構造変化を原子スケールで観察し,並行してその電子状態を研究することにより,水素吸着・水素吸蔵・水素雰囲気下における金属表面の微視的構造と電子状態の相関,および,表面反応に対する効果を明らかにすることである. 平成10年度は,表面の電子状態を探る目的で平成9年に物性研に設置された低温高分解能光電子分光装置に,水素分子や原子状水素(プロチウム)を固体表面に照射する装置をシステム内に設置した.この装置はガスの流量を精密に制御することができ,かつ,試料表面に局所的に導入できる.水素分子/プロチウム雰囲気下で様々な金属の表面原子の拡散が促進され,時には表面のモルフォロジーまでもが変化することが様々な系で明らかになっているが,その時の電子状態に関する研究は極めて少ない.現在,固体表面(Pd,Cu,Niなど)に水素分子や原子状水素(プロチウム)照射した場合のナノ構造や電子状態に関する研究が進行中である. 固体表面に吸着した水素原子(プロチウム)は表面モルフォロジー変化だけではなく,触媒反応をはじめとする表面反応に重要な役割を演じている.表面プロチウムの存在により,低温(〜30K)Ni(100)表面に吸着したCO分子がブリッジサイトに移行する現象や,Pd(110)表面に吸着したエチレン分子の配列や配向に関する研究を理研で行った.これらの成果は現在発表準備中である.
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