研究概要 |
本研究では,液晶のカラムナー構造やラメラ構造をお手本に,長鎖アルキル基を利用して金属錯体を一次元あるいは二次元に集積し,その集積構造に起因した新規機能の発現や物性制御の開発を目指した.具体的には,長鎖アルキル基をスルホン酸の形で導入し,一次元混合原子価白金錯体を対象化合物として取り上げた.この白金錯体群は,架橋ハロゲン配位子を介した電子格子相互作用により集積構造の効果が電子状態(混合原子価状態)に反映しやすいと期待され,集積化の効果を評価するのに適した系であると考えられる.以下に本研究の成果を述べる. 1. 金属錯体の合成:塩素架橋,臭素架橋,ヨウ素架橋の混合原子価白金錯体について,炭素数1〜16までのアルカンスルホン酸を対イオンとして錯体を合成を試みたところ、おおむね炭素数6〜7以上で混合原子価錯体が生成することが確かめられた.炭素数が少ない場合は,混合原子価錯体ではなく成分錯体が生成する. 2. 生成錯体の同定:得られた混合原子価錯体について,元素分析から組成を決定した.元素分析結果,ならびに,結晶の色と二色性から.既知物質と同様の一次元混合原子価白金錯体を生成していると判断できた. 3. 結晶構造の解析:得られた混合原子価錯体のうち,適した単結晶が得られた錯体について,単結晶X線結晶構造解析を行った.4種類の錯体について解析を行った結果,白金-ハロゲンの一次元鎖構造,ならびに,その一次元鎖が2次元に集積し層状構造を形成し,その層間を長鎖アルキル基が積層し,液晶のラメラ様の構造をとることを明らかにした.また,アルキル鎖長が長くなるにしたがって,白金間が短くなることがわかった.分子ファスナー効果を示しているものと思われる.
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