研究概要 |
平面4配位型のPd^<2+>やpt^<2+>に4つのリンが配位すると、同族の窒素を配位子とする場合に比べ中心金属がリンから強く電子供与を受けるために、軸方向からの配位は不利になる。従って、リン配位子の電子供与能の程度や立体構造を制御する必要がある。さらに、フラグメント同士をつなぐ適当なスペーサーを見いだすことも重要である。 [M(P)_4]^<2+>にリン配位子として単座および2座のリン配位子を用いると集積体の結晶を成長させる過程で分解が起こった。そこで本研究では、リン配位子として扁平な構造を有しかつ錯体の安定性も高めることが出来るリンマクロサイクル錯体を用いた。一方、スペーサーとしては、Cl^-の他に2価および3価のアニオンとしてシアノ錯体を用いた。その結果、trans-[Pt(Me_<4->[14]aneP_4)]Cl_2,trans-[Pd(Me_<4->[16]ane-3,11-dienP_4)][Ni(CN)_4],およびtrans-[Pd(Me_<4->[16]ane-3,11-dienP_4)]_3[Fe(CN)_6]_2,の結晶中で1次元の積層型カラムを見いだした。何れも、対イオンが錯体フラグメントにサンドイッチされた構造を採っている。しかしながら、[M(P)_4]^<2+>の金属イオンとスペーサーとの間には、ダイレクトな結合が無かった。一般に、シアノ錯体をスペーサーとした系では、シアノ錯体の窒素上のローンペアが金属錯体フラグメントに供与されて集積化が達成される。しかしながら、本研究では、シアノ基の空のπ^★軌道への逆供与が推定される構造が、何れの結晶中にも共通してみられた。このような相互作用は、リンを配位原子に持つ金属錯体フラグメントが、電子リッチであることに由来する独特の性質であると考えられ、ルイス酸性の金属錯体をスペーサーとして用いうる可能性を示唆している。
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