研究概要 |
これまで固体化学の対象であったハロゲン架橋一次元白金混合原子価錯体[Pt(en)_2][PtCl_2(en)_2]と種々のアニオン性合成脂質1との複合化をはかり、ヘテロ型複合体[Pd(en)_2][PtCl_2(en)_2][1]_4,[Ni(en)_2][PtCl_2(en)_2][1]_4,[Pd(en)_2][PdCl_2(en)_2][1]_4を新たに調製した。これらはいずれもクロロホルムに分散でき、それぞれ黄色(λmax443nm)、赤色(λmax524nm)、深緑色(λmax910nm)の溶液を与えた。これらの電荷移動吸収の極大波長は、[Pt(en)_2][PtCl_2(en)_2][1]_4(λmax590nm)の場合と同様、対応する過塩素酸塩(固体)の吸収極大波長に比べて大きく長波長シフト(60〜305nm)しており、1の嵩高さのために金属間距離が増大したものと推測される。また電子顕微鏡観察において、いづれもナノレベルの構造体として分散していることが明らかとなった。また、[Pd(en)_2][PtCl_2(en)_2][1]_4については、20-55℃の範囲で可逆的なサーモクロミズムが観測され、高温側でハロゲン架橋構造の解離がおこるが、低温では架橋錯体構造が再構成されることを確認した。以上の結果、脂質とのポリイオンコンプレックス化により、溶液系で自己組織性を有する一次元金属錯体を構築する方法論が確立された。 さらに、[Pt(en)_2][PtCl_2(en)_2][1]_4のクロロホルム溶液を気液界面に展開し、表面積-表面圧曲線の測定ならびに界面反射スペクトルの測定を行った。分子専有面積約0.4nm^2/moleculeの凝縮膜が得られ、600nmに電荷移動吸収が観測された。すなわち、界面において一次元ハロゲン架橋白金錯体が形成できることが判った。
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