研究課題/領域番号 |
10151242
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
高山 哲治 札幌医科大学, 医学部, 助手 (10284994)
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研究分担者 |
新津 洋司郎 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10045502)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1998年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 大腸癌 / GST-π阻害剤 / ACF / 二次胆汁酸 |
研究概要 |
A. 研究目的:我々はこれまで、GST-πが大腸癌発癌過程の初期病変であるaberrant crypt foci(ACF)に発現増加していることを見い出し、その意義を検討したところ、GST-πは二次胆汁酸によるアポトーシスを抑制していることを明らかにした。本研究では、GST-π特異的阻害剤を合成し、アポトーシス誘導効果、in vivo効果などを調べることにより、そのchemopreven-tive agentとしての有効性を検討した。 B. 方法と結果:(1)GSTのπクラスに対する特異性を持たせるためにglutathioneのC末端にbenzeneを、またGSTの阻害剤として機能させるためにglutathioneのSH基にmethylbenzeneを付加することにより、GST-πの活性を特異的に阻害するγ-Glutamyl-S-(benzyl)cysteinyl phenylglycineを合成した。(2)正常二倍体細胞(HEL)に変異ras遺伝子を導入し、GST-π発現の高い細胞HEL/rasを樹立した。HELとHEL/rasを二次胆汁酸(deoxycholic acid 300mg/ml)で処理した後、TUNEL法にてアポトーシスを検討したところ、それぞれ19.5%と5.8%にapoptotic bodyを認めた。一方、GST-πの特異的阻害剤にて予め細胞を処理すると、apoptotic bodyはそれぞれ36.9%と9.4%に増大した。(3)拡大内視鏡下にACFと正常組織を生検し、それぞれ二次胆汁酸(deoxycholic acid 300mg/ml)を含む培養液にて処理した後、TUNEL法にてアポトーシスの有無を検討したところ、それぞれ66.7%と14.6%にapoptotic bodyを認めた。一方、ACF組織をGST-π阻害剤にて予め処理すると、apoptotic bodyは58.3%に増大した。(4)ラットに大腸発癌物質azoxymethane(30mg/kg)を腹腔内投与した後、GST-π阻害剤及び生食(対照群)を連日腹腔内投与し、3ヶ月後に屠殺して全大腸におけるACF数を計測した。その結果、対照群では14.3±3.1個、GST-π阻害剤を投与した群では5.7±2.5個のACFを認め、GST-π阻害剤の投与によりACF数が有意に減少することが示された。 C. 考察:変異ras導入実験及びACF組織を用いた実験により、GST-π阻害剤は培養細胞やACFに発現するGST-π活性を阻害することにより、二次胆汁酸誘導アポトーシスを増強することが示された。また、ラットを用いたin vivoの実験により、この阻害剤が実際に大腸発癌物質azoxymethaneにより誘導されるACFの形成を有意に抑制することが示され、chemopreventive agentとしての有効性が示された。
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