研究概要 |
発がん機構の解析や発がん物質の効率的な検索を可能にする発がん高感受性動物の作出を目的にヒトプロト型c-Ha-rasトランスジェニック(Tg)ラットを作出した。このTgラットはMNUおよびDMBAにより乳腺発がん高感受性形質を示した。MNU投与後8週の雌Tgラットに発生した乳腺腫瘍組織の導入遺伝子変異についてclevge resistant bandをRFLPにて解析したところ, codon12に86.8%の頻度で変異が見い出され,codon61には変異の無いことが分かった。また,DMBA投予後16週の乳腺がんでは,codon12に25%の頻度で変異が,codon61では35%に変異の有ることが分かった。しかし,一腫瘍DNAのサブクローニング法とRFLPによる変異シグナルの強度の解析により,がん組織中の変異を持つ細胞の割合は少ないことを明らかにした。さらに,乳腺を標的とする食品中の発がん物質であるPhIPの投与では,投予後8週のTgラットのすべてに乳腺がんの発生が認められたが,野生型ラットには全く認められなかった。発生した乳腺がん組織における導入遺伝子では,codon12に385%で,codon61では23.1%に変異があった。しかし変異を持つ細胞の割合はMNU投与の場合と同様に少なかった。従って,乳腺発がん高感受性形質には導入遺伝子の変異以外に別の機序が関与していることが示唆された。 TgラットにNMBAを投与したところ,顕著な食道腫瘍の増加が認められ,食道においても発がん高感受性形質であることも明らかとなった。食道腫瘍における遺伝子変異を検索した結果,導入遺伝子のcodon12の76%に変異があったが,codon61には変異の無いことが明らかとなった。また,食道腫瘍では変異を持つ細胞の割合が多いことが明らかになった。
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