研究概要 |
遺伝子発現の維持機構・染色体のサイレンシング機構は、生物界で広く保存されている非常に重要な機能である。 この機能による細胞のメモリー・メカニズムの解明を目的としている。細胞がいかにして、決定(コミットメント)された状態を維持しているのかを遺伝子レベルで問い掛けることを主眼としている。「がん」に関して言えば、細胞はどのようにして正常な状態を維持しているか、その機構を明らかにする。この機構の破綻が細胞の癌化につながると考えられる。 我々は、この機構にとって重要なポリコーム・グループ(PcG)遺伝子群が,免疫系細胞の多くの遺伝子発現を調節をすることにより,リンパ球の全ての分化段階(増殖・遺伝子再構成・細胞死など)の制御に深く関わっていることを見い出して来た。今回、我々は特に細胞周期や細胞死調節機構に着目し、そのカスケードおよび、その生死のバランス調節機構を解明しようとした。これらの遺伝子カスケードをトランスジェニクやノックアウトマウスを用いて解析・証明することにより細胞の増殖と細胞死のバランス調節機構の解明を目的とした。 今年度の結果から、この遺伝子群が,細胞の(1)細胞周期の調節、(3)細胞死の調節、の両方に深く関与していることを見いだした。特にその制御カスケード(c-myc/cdc25を介したcyclin/CDKの活性調節系、Bc1-2ファミリーを介したCaspaseの活性調節系など)および、その生死のバランス調節機構を解明した。このPcG蛋白質複合体が、細胞内でどのような蛋白質と相互作用しているのか?またほかにどのような標的遺伝子を制御しているのか?細胞外からのどのようなシグナル伝達系によってPcGは制御されているのか?などの大問題にこれからアプローチする予定である。
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