研究課題/領域番号 |
10152259
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
八木 健 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (10241241)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1998年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | Fyn / Cadherin / チロシンキナーゼ / CNR |
研究概要 |
チロシンリン酸化活性は細胞の増殖、分化に重要な情報伝達系であり、細胞のがん化との関連性も示唆されている。本研究ではチロシンリン酸化酵素のFynが実際に細胞のがん化の過程でどの様に機能しているがを解析する目的で、Fyn結合分子の単離・解析を行った。本年度は特にFynと結合する細胞膜分子の同定を目的として研究を遂行した。(1)Fyn結合分子の解析。FynのN末端のSrcファミリー間で保存されていない領域、SH2、SH3をbait(餌)として、この領域と結合する分子を酵母2ハイブリッド系を用いて単離した。その結果、154クローンを得ることに成功した。この内、膜蛋白質を探索する目的で、全cDNAの塩基配列決定を行った。その結果、1クローンに疎水性アミノ酸クラスターが存在しており、膜蛋白質であることが予想された。このクローンの塩基配列を決定したところ、予想細胞外領域にカドヘリンモチーフが6回繰り返されており、新たなカドヘリン分子であることが明らかとなった。Fynと結合するカドヘリン様分子であることよりCNR1:cadherin-related neural receptor 1とした。(2)Fynとの結合能の解析。CNR1の細胞外領域でモノクローナル抗体を作製し、マウス脳のタンパク抽出液を用いてFynの抗体による免疫沈降を行った。その結果、FynとともにCNR1が共沈してくることが明らがとなった。この結果をより確かなものとするため、myc-tagを付けたFynの全長とCNR1の全長をHEK293細胞にcotransfectionして、myc抗体及びFyn抗体を用いて免疫沈降を行ったところ、両者ともにCNR1と共沈してくることが明らかとなった。(3)CNRファミリーの解析。CNR1がFynと結合する新規な受容体型分子であることより、相同な分子がファミリーとして存在していることを予想し、ゲノミックDNAを用いてサザンブロット法にて相同遺伝子の解析を行った。その結果、5'側のプローブを用いて約20本のバンドが確認された。これらの相同遺伝子の単離を行った結果、新たに7種類のcDNAの単離に成功した。これらの分子のタンパク質の構造を解析したところ、興味深いことにC末端の153アミノ酸配列が完全に一致していた。このアミノ酸配列にはPXXP配列が4箇所存在していることよりFynと結合する領域であることが想定される。 本研究により、チロシンリン酸化酵素のFynと結合する新たなカドヘリン様受容体を得ることができた。また最近種々のがん細胞株での発現様式を解析した結果、一部のがん細胞で強発現が起こっていることより、CNRファミリーの強発現による正常な細胞間相互作用の阻害が考えられる。
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