研究課題/領域番号 |
10152267
|
研究種目 |
特定領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
小崎 健一 愛知県がんセンター, 病態学研究室, 研究員 (50270715)
|
研究期間 (年度) |
1998
|
研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
|
配分額 *注記 |
4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
1998年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
|
キーワード | 癌浸潤・転移 / リンパ行性転移 / リンパ節転移 / マウス皮下移植自然転移モデル |
研究概要 |
本研究では、ヒト癌の臨床病態を大きく左右するリンパ行性転移に着目し、未だ明らかではないリンパ行性転移の分子機序とその関連遺伝子群の解明に資するべく、リンパ行性転移モデルの確立を進めた。ヒト非小細胞性肺癌細胞株(大細胞癌)NCI-H460を用いたin vivo selectionを行い、所属リンパ節へ短期間(SCIDマウスで移植後45日、KSNヌードマウスで移植後55日)で確実(100%、SCIDマウス6/6、KSNヌードマウス10/10)に自然転移する亜株H460-LNM35(LNM35)を樹立し、安定した皮下移植自然転移モデル系と肺への同所性移植転移モデル系の確立を完了した。 現在まで癌転移の基礎研究に用いられている転移モデル系の多くは血行性の肺転移モデルであり、ヒト癌細胞株のリンパ行性転移モデルの報告は数報にすぎず、確実にリンパ行性転移するヒト肺癌細胞株は皆無であるので、LNM35はリンパ行性転移の分子機序とその関連遺伝子群の解明、ならびにリンパ行性転移の診断・予防・治療法確立のための基礎研究に極めて有用なモデル系である。樹立したLNM35と親株NCI-H460の両細胞株間における自然転移能の違いは、これまでに浸潤・転移過程への関与が報告されているマトリックス分解酵素(gelatinase A及びB)やその特異的阻害因子(TIMP-2)、癌関連糖鎖抗原(sialyl Lewis X及びsialyl Lewis A)、細胞接着分子群など(E-カドヘリンやCD44、各種インテグリンα鎖及びβ鎖)の発現の差によっては説明し得ず、未知のリンパ行性転移関連遺伝子群が関与する可能性が示唆された。現在、リンパ行性の転移形質の獲得における過剰メチル化の関与を想定し、LNM35をメチル化阻害剤で処理することによる低転移性リバータントクローンの樹立を試み、複数の亜株を得つつある。リンパ節を含む遠隔臓器への転移能を有する癌細胞は、転移関連遺伝子群の発現バランスの変化によって、転移という生物現象に有利な形質を獲得したと考えられるので、今後、これらのリバータントクローンとLNM35間の遺伝子発現の網羅的比較・検討を進め、リンパ行性転移関連遺伝子群の同定を目指す予定である。
|