研究課題/領域番号 |
10153228
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植田 和光 京都大学, 農学研究科, 助手 (10151789)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
1998年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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キーワード | 癌 / 多剤耐性 / P-糖蛋白質 / MDR1 / MRP / ATP / トランスポーター / SUR |
研究概要 |
P-糖蛋白質、MRPは、構造や作用点に類似性のない多くの抗癌剤を排出することによって、癌細胞を抗癌剤に対して低感受性にする。抗癌剤を有効に使用するためには、がん細胞の細胞膜に発現するこれら抗癌剤排出ポンプの活性制御が必須である。また、これら輸送体を遺伝子治療によって骨髄細胞などで発現させることによって抗癌剤の副作用を軽減することができる。本研究は、それぞれの抗癌剤排出ポンプの基質認識機構および輸送機構を解明することを目的とし、P-糖蛋白質、MRP、SUR1などのABC蛋白とヌクレオチドとの相互作用を解析した結果、以下の点が明らかになった。 1. どちらか一方のATP結合領域(NBD)に変異を導入すると、変異を導入したNBDばかりか反対側の正常な方のNBDもATPを1回も加水分解できず、P-糖蛋白質全体のATP加水分解活性が完全に失活することが明らかになった。つまり、2つのNBDは独立にATPを加水分解するのではなく、厳密に協調しあっていることが明らかになった。 2. MRPのATP加水分解活性は、抗がん剤あるいはグルタチオンによって独立に活性化された。それゆえ、MRPは抗がん剤とグルタチオンそれぞれの結合部位をもつことが明らかになった。 3. MRPと非常によく似たドメイン構造をもつABC蛋白であるSUR1のヌクレオチドとの相互作用は、P糖タンパク質、MRPとは非常に異なることが明らかになった。 本研究によって、トランスポーター型ABC蛋白の2つのNBDの協調性がそれぞれの輸送する基質によって正の調節を受けていること、SUR1においては2つのNBDの協調性が糖尿病治療薬であるスルホニル尿素剤によって負の調節を受けることが明らかになった。P糖タンパク質、MRPの2つのNBDの協調性を負に調節する薬は、新規耐性克服剤となり得ることが示唆された。
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