研究概要 |
1. オレイン酸活性化型ホスホリパーゼD(PLD)精製の過程で酵素を強く阻害する脂質性阻害因子がブタ大腸粘膜に存在することを見出したのでそれらの精製,同定を行った.内在性PLD阻害因子はリゾホスファチジルセリン,ホスファチジルイノシトール,リゾホスファチジルイノシトールと同定された.またこれらのリン脂質をPLD1,PLD2,および脂肪酸依存性PLDに添加するといずれのPLDアイソホームも低濃度(10μMオーダー)で阻害した. 2. 神経発生におけるPLDの役割を明らかにするためショウジョウバエのホスホリパーゼD遺伝子とcDNAをクローニングした.ショウジョウバエPLDは1278アミノ酸残基から成り,分子量は145Kであった.動植物,酵母のPLDで共通してみられる5個所のコンセンサスはすべて含まれており,PXドメイン,PHドメイン,および活性部位と考えられる2つのHKDモチーフは完全に保存されていた. dPLDとPLD1, PLD2との相同性はそれぞれ37,36%でそれらと等距離にあると考えられた.遺伝子は第2染色体(2R42A16-18)にマップされた. RNAプローブを作成し,in situ hybridizationによってPLDが発生のどの時期に発現するのか調べたところ,発生過程の中で卵,およびblastoderm初期にのみ発現しておりdPLDが発生初期に機能する酵素であることが示唆された. 3. アナンダミドは1-アラキドノイルPCから合成されるが,この脂質がどのようにして生ずるのかわかっていなかった.最近我々が精製,クローニングした60Kリゾホスホリパーゼのトランスアシラーゼ活性を詳細に調べたところ,酵素は2-アラキドノイルリゾPCからアラキドン酸を別の分子の2-アラキドノイルリゾPCの1位に転移させる機能を有することが判明し,この酵素がアナンダミド合成の前駆体生成に関与していることが示唆された.
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