研究概要 |
本研究では、培養細胞系を用いて、各PKCサブタイプ特異的なターゲッティング機構を生細胞内で明らかにするとともに、長期増強や長期抑圧現象におけるPKCの細胞内動態を解析することにより、PKCのシナプス可塑性における働きを明らかにすることを目的とした。そのために、1)培養細胞系におけるGFP標識PKC各分子種のトランスロケーション現象と活性化機構の関連についての解析、2)GFP標識PKCトランスジェニックマウスの作製の試みを行った。その結果、1)γ-,δ-,ε-PKCすべてが、G蛋白質共役型ATP受容体刺激により、20sec以内に細胞膜にtranslocationし、3min以内に元の状態に戻る(Retranslocation)。しかし、ホルボールエステル刺激によっては、すべての分子種が比較的ゆっくりと(3-5min)ranslocationし、そのまま膜にとどまる。つまり、同一の分子種であっても、刺激により異なるターゲッティング機構を持つことが示された。2)アラキドン酸刺激により、γ-PKCは素早く細胞膜に、ε-PKCはややゆっくりとGolgi体周辺にtranslocationするのに対して、δ-PKCはtranslocationしない。つまり、同一の刺激によっても分子種によってtargeting部位(translocation)は異なることが示された。3)δ-PKCを活性化する3種の刺激(ATP,TPA,H202)は、それぞれ異なるターゲッティング機構によるものであり、細胞の機能に対する調節機構も異なると推測される。 以上の結果から、PKCのターゲッティング機構は、分子種特異的、刺激特異的でありしかも時間的、空間的にも異なっていることが示され、ターゲッティング機構の解析はPKC分子種独自の機能の解明に有力な方法と考えられた。
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