研究概要 |
クローニングしたmPER3はmPERl,mPER2よりやや小さく、1115アミノ酸からなる蛋白質であった。ショウジョウバエdPerの特徴とされる、蛋白質相互の結合に関与するPASドメイン(PAS-A,PAS-Bからなる)は、mPER1,mPER2と同様よく保存されていた。また、ショウジョウバエ時計遺伝子dPerを細胞質にとどめ、核内移行を抑制するcytoplasmic localization domain(CLD)構造が保存されていることも、大きな特徴である。mPER3には他のmIPER1,mPER2に認められないnuclear localizationsignal(NLS)がある。視交叉上核においては、明暗条件下、恒常暗条件下でも24時間リズムを示す。そのリズムは、CT4-8にかけて高く、mPERl,mPER2と同様、 「昼時計」型であるが、nPERl,mPER2と異なり、夜にもかなり発現しており、昼夜での振幅は小さい。 我々は、哺乳類のmPERの発現にもtimeless遺伝子が重要かどうかを検索するため、mTIMのクローニングを行った。mTIMは1197アミノ酸からなる蛋白質で、dTIMと4つのドメインで相同性が高かったが、全く異なる配列が、挿入されていた。mTIMとdTIMの分子構造を比較すると、確かにmTIM分子はPERとの結合領域のうちPAS-Aと結合する部分は保存されているが、PAS-B/CLDと結合する部分には新たなアミノ酸の挿入があり、dTIM分子が細胞質内にいてPER/TIMの核移行を妨げる重要な性質であるdTIMのCLDはほとんどmTIMでは保存されていない。このことは、mTIMの3カ所のNLSに引きずられ、mTIMは通常の核蛋白として、核の中に直ぐ入ってしまい、TIMが哺乳類では核移行のregulation stepを司る役割を失っている事を示唆している。
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