研究概要 |
線虫C.elegansの温度走性行動に必須なtax-4遺伝子とtax-2遺伝子のコードするタンパクは、それぞれ環状ヌクレオチド依存性チャンネルのalpha subunitとbeta subunitと高い相同性を持つ。ヒトの培養細胞(HEK293)において、TAX-4タンパク単独、TAX-2タンパク単独、TAX-2とTAX-4の両方、を発現させ、インサイドアウトパッチクランプ法による電気生理学な解析を行った。TAX-4は単独で、以前の報告の通り環状ヌクレオチド依存性チャンネルのalpha subunitとして機能し、今まで報告されているalphasubunitの中でcGMPに対して最も高い感受性を持つことが分かった。TAX-2は単独では機能せず、beta subunitのホモログであることが機能的に証明された。TAX-4とTAX-2を共発現した場合、cGMPとcAMPに対する感受性は共に低下するが、カルシウムなど、2価カチオンに対する透過性が上昇することがわかった(Komatsu et al.,in press)。tax-2及びtax-4遺伝子の突然変異体では、化学受容、温度受容に異常が見られ、一部の化学受容ニューロンの軸索走行も異常になる。UCSFのC.Bargmann氏らとの共同研究により、tax-2遺伝子の温度感受性突然変異を用いてtax-2タンパクが必要とされる時期を解析した。tax-2変異によって軸索走行が異常である個体が成虫に達した後に、温度シフトによって正常なtax-2タンパクを供給すると、軸索走行異常が、ある程度正常に復帰することがわかった(Coburn et al.,1998)。すなわち、環状ヌクレオチド依存性チャンネルは、成虫に達した後も、軸索走行を正常に維持するために常に機能している必要があることがわかった。最近我々は、同様の温度シフト実験から、正常な温度受容を行う際にも、環状ヌクレオチド依存性チャンネルが常に機能している必要があることを示唆する結果を得ている(小松、山内、森、未発表)。
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