研究概要 |
(I) グルタミン酸受容体ε1,ε2及びδ2サブユニット組換型バキュロウイルスベクター系を構築し、Sf21細胞に感染・発現させ、次のことを確認した。(1)Western解析、[^<35>S]メチオニン/[^<35>S]システイン代謝標識実験、免疫細胞化学的手法により、その発現が確認できた。また、Tunicamycin(N-グリコシル化阻害剤)処理後、Western解析等により、N-グリコシル化型及び、非N-グリコシル化型の数種の分子種の発現していることが確認された。(2)[^<32>P]リン酸を用いた代謝標識実験では、発現したε2に放射能の取り込みは見られたが、δ2には見られなかった。(3)発現したδ2に対する[^3H]リガンド結合実験では、AMPA,Kainate,Dichlorokynurenate,CGP-39653.MK-801,L-Aspartate,D-Aspartateに対する結合活性は今のところ見られていない。ζ1サブユニットと共にNMDA受容体チャネルを構成し、機能的多様性の基盤を担っているεファミリーサブユニットの分子機能、生理機能の理解に向けて、また、極めて重要な機能分子と推測されているもののほとんどその分子機能、生理機能が未知であるδ2サブユニットタンパク質の理解に向けて、本発現系を活用して行きたい。 (II) エイズ脳症の少なくとも1つの原因としてHIV gp120のNMDA受容体を介した神経細胞死が考えられているが、従来いわれている間接作用とは別に、gp120がNMDA受容体グリシン部位に直接作用していることが示唆されはじめているが、これを検討し、以下の結果を得た。(1)バキュロウイルス系を用いて発現させたNMDA受容体ζ1サブユニットは、グリシン部位のアンタゴニストリガンドである[^3H]DCKA結合活性を持ち、gp120はその結合を濃度依存的に阻害するようであった。(2)preliminaryな実験ではあるが、Fura-2を用いたCaイメージング解析によると、gp120添加はMDA受容体(ζ1/ε1)を発現させたCHO細胞で[Ca^<2+>]を増大させるようであった。HIV-1 gp120はNMDA受容体チャネルに直接、作用しうる可能性が考えられた。 (III) ζ1サブユニットのヘルペスウイルスベクタークローンをVero細胞に感染させ、その発現の経時変化をWesternブロットで解析する等、in vivoでの感染実験を目指して、解析を進めつつある。
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