研究課題/領域番号 |
10157226
|
研究種目 |
特定領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
瀬川 新一 関西学院大学, 理学部, 教授 (70103132)
|
研究期間 (年度) |
1998
|
研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1998年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
|
キーワード | 蛋白質の折りたたみ / NMR / 水素パルスラベル / リゾチーム / アンフォールディング |
研究概要 |
蛋白質の折りたたみ機構を分子科学的に解明するために、これまではCDスペクトルや蛍光強度変化をモニターとして種々の実験が行われてきた。しかしこれでは分子全体の構造変化に関する情報しか得ることが出来なかった。そこで我々は、水素交換反応とNMR分光法を用いることによって、リゾチーム分子の変性(アンフォールディング)反応を原子レベルの分解能で観測することを試みた。すべての主鎖アミドプロトンをあらかじめ重水素で置換しておき、これを変性反応させ一定時間経過後に、短時間溶媒をpH9の軽水に変化させることによって、溶媒にさらされた蛋白質の領域を^1Hでパルス的にラベルした。このようにして作製した水素パルスラベル・リゾチームの2次元NMRスペクトル(HOHAHA)を測定することによって、残基毎に溶媒露出の速度定数を決めることが出来る。pH3.0、塩酸グアニジン4.0Mの条件下でリゾチームの変性反応を追跡し、約60個の主鎖アミドプロトンの交差ピークを観測して、ほぼすべての残基がいっせいに位相をそろえて溶媒露出するという結果を得た。さらに残基レベルの構造変化の活性化エネルギーを決定した結果、どの残基も36kcal/molとほぼ一定の値を持つことが明らかになった。これは、蛋白質の変性反応が分子全体にわたって協同的に構造変化するものであることを、はじめて実験的に明らかにしたものである。さらに、このような分子全体に渡る協同的な構造変化が、どのようなきっかけで引き起こされるのかという点に注目して、変性条件下において過渡的に折りたたまれたリゾチーム分子の水素交換反応のプロテクション・ファクター(遅延因子)を決定することを試みた。まだ数少ない実験データからの予測であるが、変性溶媒条件下の過渡的な折りたたみ構造においてリゾチームのβドメインの残基のプロテクション・ファクターが著しく減少していることが予測された。この点を今後明らかにするつもりである。
|